血と百合の遁走曲/佐々宝砂
に、また、生者のために、
なんぴともこの者らに触るることなかれ。
キリスト再臨のとき到るとも、
清き百合を捧ぐるなかれ。
父と子と精霊の御名によりて。
エピローグ、彼
象徴的に屹立する塔の先端、
閉ざされた部屋に彼は横たわる。
寝床にはやわらかな布も肌もなく、
ただ冷たく並ぶ鉄の針。
灰色の壁、灰色の床、
目を楽しませるものは何もない、
無機的な空間で彼は祈る。
死語で。文字通り、死んだ言葉で。
赤く濡れた傷口から流れ出す、
生命の潮よ、
約束を口にするな!
それは神にのみ許されてあるもの。
ただ簒奪することし
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(6)