血と百合の遁走曲/佐々宝砂
 
った今死んだばかりのような顔色で、
深紅のくちびるから赤い糸をひいて。

だから彼はまたサンザシを削らねばならなかった。




みたび、墓所

彼女は古い墓所に小さな地下の室をみつけた。
埃に埋もれてふたつの柩があった。
長たらしい墓碑銘は彼女の手に余った。
ただ女の名だけが読みとれた。

私と同じ名前だわ!
小さく叫んで、
彼女は百合を捧げる。

彼女に手をひかれてやってきて、
まだ若い神父が墓碑銘を読んだ、
彼女は内容をとても知りたがっていたのだけれど、
彼はどうしてもそれを伝えることができなかった。




墓碑銘

死者のために、
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