血と百合の遁走曲/佐々宝砂
るべきものは用意した。
大ぶりのナイフ、生のニンニク、
祈祷書、聖水、ケシの実、
そして鋭く尖らせたサンザシの杭。
彼は待っている。
誘惑のときを?
対決のときを?
否、拒絶のときを。
再び、墓所
母親の嘆きを彼は慰め得なかった。
どうしたら信じられよう、
桜色の頬と深紅のくちびるを持ち、
しかも夜になれば目覚める娘、
その娘がもうこの世の者でなかったと。
彼はすべてをひとりでやってのけたので、
疑う者も多かったのだ。
しかし彼は根気よく語りみなを納得させ、
海に背を向けた墓を暴いた。
そこには一人の男が眠っていた、
たった
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(6)