血と百合の遁走曲/佐々宝砂
 
のことでした。

ねえ、神父さま、
淋しい墓に百合を捧げることがいけないことでしょうか?
私にはどうしてもそうは思われないのです。

どうか、お願いです、神父さま、
私を愛しているとおっしゃるのなら、

その首筋にキスをさせてください。




祈祷室

夜の祈祷室。
野イバラの蔦にいましめられて木のベンチに眠る彼女。
蝋燭の明かり。
窓辺にイチイの暗いざわめき。

彼は待っている。

流れる赤い血を持たぬ屍が、
なぜ血生臭い霧とともに現れるか?
死して久しい屍が、
なぜこれほどにひとりの女を魅惑するか?

彼は待っている。

用意するべ
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