蘇我氏/tonpekep
奈良盆地には明日香という村があって、春ともなれば菜の花が村のいたるところで一斉に咲き出す。
それはまるで布袋をひっくり返してあふれでた砂金のように、村を黄色く飾り立てる。
その鮮やかな金邑の中の、少し小高くなったところに、巨大な石積があって、何人の干渉をも拒むかのように静かに横たわっている。
飛鳥石舞台古墳である。
上円下方墳と推測される。その剥きだしの墓石に埋葬されたのが蘇我馬子だったと言われているが、確かなことは分からない。そもそも蘇我氏自体が遙か上代の煙の中でぼんやりとしていて、よく見えない。推測の中で蠢いている一族とでも言おうか。蘇我氏は渡来人だったという説もあり、大和王権の表
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