あらゆることが語り尽くされたあとに/ホロウ・シカエルボク
 

そのむかし携帯電話で書いた詩の一節を思い出す
あれはきっとこんなようなリズムを思いながら書かれたのだ
二十年前の記憶が現代のように生きる


過去は、人生は、感情の数々は
がらんどうの
朽ち果てた聖堂のような場所で
淡雪のようにゆっくりと積もる
音もたてず
取り立てて目を引くようなものもなにもなく
ただゆっくりと落ちては積もっていく
見上げるほどにうず高く積み上げられても
それがこちらに向かってなにかを語るわけでもない
どれほど積もってもどこか心許ない
そんな蓄積はどんなことを語っているのだろう
忘れられた場所のようなそんな空間は
誰にも出会えない街を歩いてい
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