あらゆることが語り尽くされたあとに/ホロウ・シカエルボク
ているときの気持ちを思い出させる
いつか
記憶はなくなる
いのちはなくなる
なきがらは燃やされて地下に押し込まれ
不在をかたるだけのものになる
感触としては忘れ去られ
ただそこにあったというだけのものになる
書き残された詩文が
痕跡だなんて思ってはいけない
それがほとんどのことを語り残しているからこそ
新しい旋律がまたつづられるのだ
なにも描かれないページを
うつくしいと思うことは間違いだ
それは赤子の純粋さと同じで
尊いけれどもどこへも行けはしない
もしも俺の肉体が終わりを迎えたなら
どこか見晴らしのいい場所に投げ出してくれ
そしてカメラを回して
骨になるまでの一部始終をすべて記録してくれ
雨に洗われて白く輝いたとき
そのときに初めて死んだと記して欲しい
戻る 編 削 Point(15)