あらゆることが語り尽くされたあとに/ホロウ・シカエルボク
 
ちにならないのだろう
ちぎれかけた銅線がわずかな振動でほんの一瞬
忘れかけた通電をしているかのようだ
ああ、こどものころに
外れかけたコンセントプラグに触れたときのあの得も言われぬ痺れ
表皮だけがすべてを覚えている


雨の日の記憶は
思い出すたびに溶けていく
気づけばいつの間にかすべてなくなってしまっていて
あしもとに水溜りだけが残されている


強い風にあおられて剥がれかけたトタン板が
アフリカン・パーカッションのようなビートを投げかけている
文化と文明が申し訳程度に分けられたこの街で
なにも選べなかった連中のために鳴り続けている
踊れ愚者、踊れよ愚者と

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