夢夜、四 獣の影と永遠の放課後の廊下?/田中修子
 
には、十字架がしずかに光っていた。

 神父様!

 獣に追いかけられて声も出せず、その薄い昼の窓の前を駆け抜けた。
 するとまた、すぐに不思議なことに、おんなじ昼の中庭の見えるふたつめの窓があって、どれだけ遠ざかっても大きさのかわらない月のように、やはり神父様は態勢を崩さず、祈っていらっしゃるのが見えるのだった。

 「神父様!」
 
 今度はおおきな声が出た。この薄さであれば、声はプレパラートの窓をとおって神父様に聞こえているはずだ。けど、どうしたって、彼の耳に届いていないことは、分かった。
 神父様は、目をとじていた。お祈りを唱えているのが、私にはしずかだけれどはっきりと
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