カナリアの宝石さがし/田中修子
閉鎖病棟のお昼ご飯のとき
彼女はとうとつに、異国の歌を囀りだした
お父さんとお母さんの赴任先の香港で
メイドさんのを覚えたという
薄い月の浮くお昼間みたいな
あかるい声
わたしと同い年の三十歳だという彼女は
なんでかとても
あどけない
まわりを気にせず囀りはじめ
とうとつに終わる金糸雀さん
かってに喋り始める だれもきいていない わたしのほかは
「あたしね 三十歳なんですけど 精神年齢が幼稚園児なんですって
それでね べつに頭は悪くないんだって 病気でもないみたい
おとうさまとおかあさまがびっくりしてね
ここにつれてこられたの
あしたから思春期病棟に
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