カナリアの宝石さがし/田中修子
棟にうつるの
そしたらね もうお会いできなくってね
でもいいの ここ おばさんたちだけだもん
同い年の子となかよくできる
治ったら 退院できるの
いつ治るのかな また香港に行きたいなぁ
今度はちがう歌をうたいます メイドさんが歌ってくれた童謡です」
気づかないでこられて
よかったね
あなたは治らない
手遅れまで育てられなかっただけだから
昔のわたしとおんなじだった
あのころわたしは気づいてしまった それでとっても怒っていたの
あんまり腹が立ちすぎて
消えようとしたけれど未だ浮いている薄い月
あの病棟には香港育ちの金糸雀の歌声が今日も響いている
うるさいと睡眠薬がでるかもしれない
悪いガスだらけの炭鉱で 生きていくということは
薬漬けの金糸雀
それでもわたしはパタパタとんでいる
薄い月浮く空のした
枯葉の落ちる土のうえ
炭鉱から掘り出して磨く宝石をさがして
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