光の海/若原光彦
東の方角に、
明星が
たしかに残っていた。
「よく気づいたねえ」
「慣れてるから。この時間帯に。
みんなちょっと明るくなったり、雲があったりするだけで、
もう星なんてないと思っちゃうんだろうけど。
知ってるからね。知ってれば見えるよ」
と言ってあなたは、
満足そうに口角を上げた。
あなたが得意げなので、私はひそかにうれしい。
「なるほどね」と感心を口にして
私が目線を空に戻すと、
そこに星はもうなかった。
「手品みたいだな」と私が言うと、
あなたは「見えなくなったの?」と言った。
私はおどろいてたずねた。
「あなたには、まだ見えてるの?」
「見
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