光の海/若原光彦
 
「見えてる。ひとの目はひとによって違うからね」
「なんだか、損だな」
「損得じゃないでしょう。
 わたしだってもう1分ないぐらいで見えなくなると思うよ。
 いまにも朝日が昇りそうだし」

無言でふたり、
東に向かってぼうっと立って、
空をながめて、

そのうちあなたが「うん、見えなくなった」と言った。

「そう。行こうか。
 それとも日の出も見てく?」と私がきくと、
あなたは「どっちでもいい」
とほんとうにどっちでもよさそうに言って消えた。
戻る   Point(3)