光の海/
若原光彦
「見えてる。ひとの目はひとによって違うからね」
「なんだか、損だな」
「損得じゃないでしょう。
わたしだってもう1分ないぐらいで見えなくなると思うよ。
いまにも朝日が昇りそうだし」
無言でふたり、
東に向かってぼうっと立って、
空をながめて、
そのうちあなたが「うん、見えなくなった」と言った。
「そう。行こうか。
それとも日の出も見てく?」と私がきくと、
あなたは「どっちでもいい」
とほんとうにどっちでもよさそうに言って消えた。
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