記憶がなくなれば永遠になることが出来る/ホロウ・シカエルボク
底は、と僕は考える、海の底はきっと、こんな冬の夜よりもずっと冷たくて寂しいものだっただろう―誰も彼も、寂しくてしょうがなかったから浮かび上がってきたのだ、「水面に出たら皆で輪になろう」そんな約束がなされたかもしれない、「それはそれは見事な結晶だった」と記事には書かれている、その描写のせいで後々この新聞を作っていたオフィスはなくなってしまった、彼らにしてみれば追悼の意を込めた一行だったのかもしれないが…どんなに心を込めたって意図が通じないなんてことはべつに珍しことじゃない、君は黙り込んだ僕を不思議に思って、昏倒した患者の頬を打つように軽く、僕の頬をぺしぺしと叩く。僕は我に返る、いつのまにか海の底のこ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)