記憶がなくなれば永遠になることが出来る/ホロウ・シカエルボク
のルームウェアに袖を通す、それは毛布で出来たガウンのようになっていて、僕らはその着心地をとても気に入っている―窓の外にはなにも変化はない。
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十年前の今日のこと、沢山の人を乗せた船がこの窓のずっと北の方にある海で沈んだ、原因は動力機関のどこかで起きた火事だということだった、乗船していた全員が真っ黒に焼け焦げて、海の上で結晶のように放射状に散らばっているのがあとあと見つかった、彼らは海面に出ている部分以外のすべてを魚に啄まれていた…出来損ないのミイラみたいな塩梅だったということだ。この部屋の壁にはその時の記事を載せた新聞が飾られてある、僕らの両親がその事故で居なくなったからだ。海の底は
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