ジャンヌ、雪の病室/田中修子
 
いのに、私ですらほんの数回しか見たことがない、いや、私ですら知らない、こころぼそさが抜けてほんとうに花がほころんでいるように柔らかいお母さんの顔があった。
 そのポートレートが遺影になった。私は遺影でしかあんな、優しい、けがれのない、お母さんの顔を知らない。
 
 その写真を見ると、ぶん殴りたくなる。

 あのひとは晩年、活動をしていなかった。
 仕事を引退した父は逆にのめり込んでいった気がする。

 されたことを全部思い出して、首をきって、私の水ぼうそうをえぐった頃の母を、過去視のできる人にみてもらったことがある。その人は私の過去を見て、「あなたがいちばん意地悪をされていたとき、
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