ジャンヌ、雪の病室/田中修子
き、お母さんは、自分がしたくないことをしていたようね」って言っていた。時期的に、活動しかないじゃないか。
活動から遠のいてからのあのひとを、私を知らない。その時にはもう、あのひとに会うだけで自分を傷つける症状が出てしまっていて、私は精神科へ入院したりアルバイトをし過ぎてからだを壊して寝たきりになったり、そんな生活の繰り返しだった。
ジャンヌ・ダルクはジャンヌ・ダルクをできる人じゃなかった。きっとそうだ。
晩年はフラワーエッセンスとかアロマオイルとか、害のない民間療法に凝って、ひろめてた。
あのひとはただの平民で、ただの娘で、ときたま可愛らしい、少し不思議な仕事をする人でいるべきだった、と思う。
ジャンヌ、いまこんなふうに娘に文章で火あぶりにされている、かわいそうな、ジャンヌ。
私はあなたを愛したかった。
私がいつかお骨になって火あぶりに、真っ白に燃え上がるとき、あなたのこと、少しは分かる? そうして砕けたお骨は雪になって、あの病院の日に、しずかにつめたく降り積もる。
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