ジャンヌ、雪の病室/田中修子
屋にこもっているだろう匂いを処理してあげようと思った。
布団に横になってまた険しい顔をしてあのひとは邪魔そうに私を見た。「なに」部屋はなんの匂いもなかった。けど、あのビニール袋もなかったから、あのひとはたしかに吐いたのを処理したはずだ。
差し伸べた手を切り刻まれたみたいな気分。
おばあちゃんを送ったのと同じ病院に入院したい雪の日、あの顔。あのひとが、あの女、でもなく、こころぼそそうではにかんだ、お母さんの顔をした、ほんの数回のうちのひとつ。
あのひとが亡くなる数日前に、お弟子さんがなぜかどうしても撮る、と言って撮った写真があった。険しいか不安そうな顔で睨んでいてほしいの
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