ジャンヌ、雪の病室/田中修子
 
も、買ってくれた。

 私は嬉しくてそれからその真っ黒いコートを、破けるまで10年くらいは着てた。

 お見舞いの日、真っ白い雪の坂をすべらないように上るのが大変だった。手はかじかんで縮まりそうだった。
 真っ黒いコートにボタっと雪が散って、ドロッと透明に溶けていって、どんどん体がしみてった。

 そうだ、あれは青く光る稲の日におばあちゃんを送ったのと同じ病院だった。
 個室じゃなかったと思う。大部屋で他に人はいなかった。やっぱり病室はおばあちゃんが亡くなったときとおんなし、まっしろだった。

 母は、すごくこころぼそそうな、はにかんだような顔で、
「お見舞いありがとう」

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