ジャンヌ、雪の病室/田中修子
なかった。お昼代は服代に消え、夜はほとんど食べなかった。三か月で50キロ代から40キロまで落ちた。私の筋肉はほとんど溶けて、鎖骨とあばらの浮き出る、青白い低体温の少女になった。
そうして、少女が着るにふさわしいコートを見つけた。大学生向けのショップだった。黒い、細い、ダッフルコート。どうしても手の届かない値段だった。あんなに憎かったのに、あの女にねだったのはなぜだったろう。
まだリサイクルショップのないころ、服はイトーヨーカドーのワゴンセールで買うのが当たり前のあのひとにとって、大学生向けのブランドの2万円のあのコートはすごい出費だったろう、それなのに、ものすごくイライラしながらも、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)