白髪の朝/ただのみきや
の止まった声
こっちはすっかり白髪も増えたというのに
青年期と変わらず 否それ以上に
絶えずイラついて噛みつきたい衝動と
そんなこと全く介さず他人事のように
生の収束と来るべき死をぼんやり眺めた
冬というよりは春を待つような心持ちが
不可分だけれどはっきり層を成して
流れを下っている
とある庭先の薄紅の薔薇が芯まで凍え
微笑みすら死の接吻のよう
振り向く日差しに弛むこともなく褪せ
縁から濁って往く
容姿はゆっくりと損なわれるもの
香りが 色彩が みなぎる花びらの張りが
静かに燃えていた見えざる命の炎が
ある時を境に微かな熾の残り火のよう
ただ冷めて
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