ジャンヌ・ダルクの築いたお城 少女Aとテントウムシ/田中修子
ご飯を食べきれなかったら、私だけじゃなくおばあちゃんまで叩きだされて野垂れ死んでしまう。私はなんだって困らないけど、おばあちゃんは悲しい。それなら一緒に死んであげたい、楽に殺してあげたい。あの女はご近所さまに対して困るだろう、それなら私が一家みな殺しの犯人になって最後に自殺したらハッピー・エンドだ。
ト、小学生の私は思っていた。
「はよう死にとう。はよう死にとう」
哀願する大好きなおばあちゃんの口にスプーンを突っ込める私は、頭がおかしい。本田勝一の「南京大虐殺」に出てくる日本兵みたいだ(あとで本田勝一の本の多くにねつ造が指摘されることを知った)。
5人家族の幸せなこの家で、いち
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