メモリアル・ムーン/ホロウ・シカエルボク
 

おたがいに目すら合わしはしなかった
わたしは自分の部屋にこもって
ままならぬ身体を呪いながら
おまえが産まれた夜のアルバムをずっとめくっていた


同じ家の中でおたがいのことを知らぬまま
何年もの時が流れた
わたしは心臓の手術をすることになり
半年ほど家を空けた
おまえは一度も見舞いに来なかった
そもそもわたしも
どこの病院に行くのかすら教えてはいなかった


ある日、車椅子に乗って
検査を終えて病室へと戻るとき
産婦人科の待合に若い男と腰を下ろしているおまえを見かけた
おまえはずっとうなだれていて
時代遅れのテディ・ボーイみたいな恰好をした男は
脚を組
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