メモリアル・ムーン/ホロウ・シカエルボク
悲しみに手一杯で
おまえの無邪気さをすこし疎ましく感じていたかもしれない
ママがいないことの悲しみはおまえにももちろんあっただろうが
それはわたしが知っている悲しみとは違う種類のものだった
わたしは捨て犬のような気分で
おまえの食事をつくり
おまえとわたしの着ているものを洗った
妻だった女のクローゼットはどんなことがあっても開けなかった
おまえは信じられないほど元気な子で
頑なに髪を伸ばすことを拒んだから
ズボンを穿いて駆けまわっているとまるで男の子のようだった
学校でケンカをして男女構わずやっつけて呼び出されるたびに
「男手ひとつで育てているもので甘やかしすぎたか
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