メモリアル・ムーン/ホロウ・シカエルボク
 


ジョディ、おまえが産まれたのは
数十年に一度の月が太陽のように夜空で燃える
八月の終わりの夜だったね
いま、開け放たれた窓から見える月は
あのときのものほどではないがそれでも
やさしくこころを溶かすようなうつくしい満月だよ


あの夜、アニーはやつれた顔で
タオルにくるまれたおまえを抱いて微笑んでいた
産婆は疲れ果てて床に座り込んでいた
わたしは手持無沙汰で、だけど
おまえに出会えたよろこびにこころを躍らせていた
あれほどのひかりに満ちた夜は
後にも先にもただ一度きりだったよ


おまえが五歳のときにアニーは家を出て行った
まだ若かったわたしは自分の悲し
[次のページ]
戻る   Point(3)