爪の足/あおい満月
は切なく哀しい音がして、理解した。
*
父親が私を殴った。何度も何度も。母親は私を罵った。夜が明けるまで。
私は悲しすぎて涙を忘れた。けれど、とても誰かを呼びたかった。ここか
ら連れ出してくれる誰かを。扉を開ける音がして私は目を覚ました。そこ
には、私が待っていた人がやってきた。その人は父親と母親と気軽に話を
し、私の無事を聴いてからテーブルに包み紙を置いて去っていった。私は
あとを追いかけたかったが、父親に肩を掴まれてできなかった。包み紙の
中は数枚の札だった。父親と母親は酒を酌み交わしながら笑っていた。そ
の不気味な声を聴きたくなくて私は耳をふさいでいた。恋しい人は叔
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