爪の足/あおい満月
 
は叔父だ
った。叔父は母親の弟だ。私の父親と叔父は仲があまり良くなかったが、
金が絡むと父親は盛んに叔父をほめたたえた。私にはそれが悲しかった。

**

制服に身を包んだ私は、白い手紙を手に校門の前であの人を待っていた。
初恋の彼だった。彼は私がどれほど自分を好きなのかは知らないだろう。
しかし、今日ここでこの手紙を渡さないと一生後悔すると友人に云われた
から、卒業式の今日この日に私は彼を待っている。桜吹雪の中から彼がや
ってくる。しかし彼の傍らには、べつの女子がいた。彼と仲のいい、彼と
同じクラスの女子だ。その女子が私を見つけて彼に指を指して教える。彼
は私に向かってにやりと睨む。それが私にとって世界で一番の悲しみだ。

***

だから私には、爪の足の悲しみがわかる。手に入れては失い続ける誰に
も理解できないであろう悲しみが。浴槽の明かりを消して、暗い水の中
で私は爪の足とともに泣いて泣いた。空間中が悲しみで満ちていく。し
かし私にはそれがとても美しく感じて世界で一番愛おしい時間だった。


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