夢描写、三度目/MOJO
 
っただろ?」
「この町は、埃っぽくて、白い物もこんな風になっちまうんだよ」
「そうか、それはそれでいいな。映画で観たパリのタクシーみたいで、カッコいいじゃん」
 弟を助手席に乗せ、BXを運転し、海岸通りに出る。海の波は穏やかだが、町工場の廃液が流れ込んでいるようで、鉛色。
「きたねー海だな」
「ここは、そういう所なんだよ。昔は東急が開発してさ、それなりに賑わったんだが」
「おれが乗ってきた電車は東急じゃないのか?」
「違うよ。東急は、もう何十年も前に撤退して、あの線、今は貨物の方が多いんだよ」
 そのようだ。海岸線を左に折れ、鉄道の踏切に差し掛かると、遮断器が下りてきて、貨物列車が
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