街に降る/春日線香
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並木道のすべての木
それぞれに花が供えられていて
赤や青など色とりどりで
道ははるか彼方まで続いていて
花の種類は無限に豊富で
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映画館の天井いっぱいに
怒った男の顔が浮かび上がる
途方もない怒り様である
耳鳴りがあまりにうるさいので
生まれてから一度も眠れないのだ
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蝉の幽霊が上空に集まってくる
何事かを相談しているらしい
生まれ変わりの人々が皆行き場もなく
駅前を行ったり来たりするのを
透き通った眼で追っている
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辿り着けない本屋というものがあり
その一帯は地図に記載されておらず
行き来も定
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