街に降る/春日線香
 
も定かではないが
ただ夜中に燐寸を擦った時にだけ
(………この一行紛失………)

   *

壁の中にはぎっしりと
生きた蛇が詰まっていて
冷たい壁に耳をあてると
蛇が身じろぎする音とともに
教会の鐘の音が聞こえてくる

   *

錆びついた自転車
空でじっと動かない入道雲
上手に切り分けられた肉
閉鎖した喫茶店
今日の死亡者は疑いようもなく零

   *

拾った磁器の欠片を
遅い朝の日差しにかざせば
青く鳥が描かれているのがわかる
いつも懐に入れて持ち歩いている
宇宙の欠片を抱くようにして



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