あらかじめなにかが窒息している/ホロウ・シカエルボク
 
のか、どちらにせよそんなものは空地に投げ捨てられたカラのペットボトルとたいして違いはない―よく目立つかそうでないかというところ以外には…先週、仕事の帰りの堤防沿いで目撃した事故のことを思い出す、小さな、欠損した、動脈からの血液にまみれたなにかが転がっていた、若い女が気が狂ったみたいに叫んでいた、そんなことをしてももうどうしようもない…あの日は雨が降っていた、仕方なく降っているみたいな意気地のない雨だった、おんぼろのスクーターのタイヤはよく滑って…俺は自分が死なないようにアクセルを保つのに精一杯だった―凄惨な、突然の死だけが悲しいわけじゃない、死にとって原因はギミックに過ぎない、命にとっての人生がま
[次のページ]
戻る   Point(3)