アゲハチョウの航路/霜天
 
握っていた手のひらを開くと零れていくものがあったので
僕はどうやら何かを、どこかに忘れてしまっているらしい
記憶をひも状にして木の枝に引っ掛けて、登る
どうしてもたどり着けない


アゲハチョウの飛翔
僕らは空から切り取られて
どうしようもなく自由だ
一人という単位で
追い掛けてみたくなる

ゆらゆらとアゲハの航路は水平線を、止まることなく
休むときはその両手を、どこに休めるのかも忘れて
切り離されて、水分を含んだ、僕らのその、周りを
忘れることもなく、とどまることもなく、さよならに似た

ゆらゆらと
ゆらゆらと
ゆらゆらと


僕らはどうしようもなく、
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