黒いぐちゃぐちゃ爆弾/田中修子
わたしのお父さんには ふたつ 顔があります
男と同じだけ働いて 子どもを産んで 社会活動をしなさい
というお父さんの顔は真っ暗闇に覆われて
そばにいるのに目を細めていくら探しても
なんにも見えない 触れない
うちを守って 子どもを愛し 好きなことをできたらいいね
という顔は、とぼけていて、ちゃんとそこにある
お母さんは真っ暗闇に覆われたまま逝ってしまって
ほんとうになにも思い出せないのです
ぽっかりとあいたおそろしい穴ということだけ
「顔も体形もそっくりだね」と言われるけれど
家族の絵を描こうとするとあの人のところだけ
黒いぐちゃぐちゃ
よって、わたしも黒
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