不愉快な手触りの街/ホロウ・シカエルボク
 
とを教えてあげられたんだけど
コンビニで酔ったサラリーマンが大声を張り上げている
韓国の役者のような背の高い男がウンザリにも飽きた様子でただただ
適当にご機嫌を取って帰ってもらおうと願っている
数人の若者の客は興味津々で
買物をするのも中断して陳列棚の陰から様子を窺っている
コンビニの向かいの年寄りが経営していた駄菓子屋は先週廃業した
メイン道路はあちこちで拡張工事が行われていて
精神異常者の脳味噌のように建築物と更地でまだらになっている
殺人事件があった一軒家の庭先で去年の七夕の飾りが
行き場のなくなった願い事を風に晒している
「パパとママがまた仲良くなりますように」と

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