不愉快な手触りの街/ホロウ・シカエルボク
隠すみたいに吊るされた短冊がただただ汚れている
自動販売機の前で飲料を選択しながら
こんなことが過去に何度繰り返されただろうと考えるとこめかみが泣いた
公衆便所の中で誰かが吐いている
毒でも盛られたみたいな懸命な調子だ
年代物のタイル細工の中でそれはまるで
ディストーション・ギターの強烈なうねりみたいな調子になる
台風が近づいている
ひどい湿気ところころと変わる空
手ごろなトラックを周回しているランナーのように時折吹く強烈な風
飲み干した缶コーヒーの後味はわざとらしくて
まるで流行のドラマの最終回みたいだった
ねえ君、この街はどうしてどこもかしこもこんな感じに煤けているのだね
スマートフォンのディスプレイがそこらで緩い反射を残すさまは
どういうわけかホロコーストを連想させてしかたないんだ
なにを飲み干しても潤う感じがしない
ただ夏がまたひとつ目を閉じるだけで
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