三十五歳/葉leaf
 
地へ、初めて見る配列の中へ。看板はいつも事件のように現れ、建物はその事件の詳細な内容のようだ。彼が美しく整った庁舎内に入っていくと事件は隠蔽されたが、彼の中では複雑に増幅された。

人と人とが演じ合う仕事のコミュニケーション、その背後には真の信頼と軽蔑がある。仕事のやり取りでは誰もが等価で並列するが、彼の内部では人毎の細かい評価がなされていた。絶対的に尊敬し信頼する上司から、絶対的に軽蔑し信頼しない上司まで、水面上には決して現れないほんとうの心が微細に揺らめいていた。誰に対しても等しい微笑で対応しながら、片方を「神」として敬い、もう片方を「馬鹿」として切り捨てていた。

役所での用事が済ん
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