三十五歳/葉leaf
 


本質は本質として朽ちていき、装飾や細部にこそ神は宿るのだった。仕事は論理によって組み立てられた城であるが、その堅固さを基礎づけているのはむしろ至る所にある建具の装飾なのである。龍の形をしたり雲の形をしたり山水を描いたり、それらの装飾の綾こそが仕事を別の原理から基礎づけている。虚栄心や嫉妬に基づく競争や攻撃、そういった装飾的な外郭をうまく克服することに、仕事はその本質の裏側でぴたりと癒着している。

遠くの役所に書類を届けるために車を運転する、ふと空を見上げると雲が驚くほど白くて思わず涙がこぼれた。かなしみをあつめてより高次のかなしみを生み出したい、そう思った。車は国道から折れて市街地へ
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