日向の標本/ホロウ・シカエルボク
 
、それは判らなかった、おれはその場所のことを知らなかったのだ、いままで訪れたこともないようなところで、どうしてそんな風に横になっているのか?それはまるで明方に見る脈絡のない夢のようだったが、おれにはそれが夢でないことは判っていた、それが覚める気配が少しもなかったからだ、それにはもっと現実的な理由があるに違いなかった、ここが現実であることははっきりしていた、ただその現実がどういうものなのかということをおれが理解していないだけだった、どこかで、工場の壁いっぱいに取り付けられた巨大な換気扇が回るみたいな重く錆びた音が聞こえていた、でもそれはとても遠い場所だった、この建物はどのくらい広いのだろう、とおれは
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