日向の標本/ホロウ・シカエルボク
が泳いでいる池があった、時代錯誤だ、とおれは思った、まるで時代錯誤だった、そんなものがなにがしかの威厳を語っていたのはもう三十年は前の話だ、いくつかの事柄は全く進歩しないまま後生大事に様式なんて言葉で維持され続ける、でもそんなものにどんな意味も残ったりはしない、「昔そういうものだったこともあった」そんなことを窺い知ることが出来るというもの以外には
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ラウンジは迂闊な人間なら白で統一されたと感じてしまっていただろうが、何のためにそこに塗られたのか釈然としないようなアイボリーで塗り潰されていた、始めっからそうだったのか、あるいはなんらかの出来事によってそういう色で塗り潰されたのか、そ
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