思考は瓦礫の中で/ホロウ・シカエルボク
 
欲望に勝ることはない、イデオロギーを振り翳している連中を一目見ればそんなことはすぐに判る、テーマが設定されればその他のものはすべて見過ごしてしまうものだ、住宅街を通り抜け、繁華街へ出る、通りすがりに顔をじろじろ見ていくやつが居る、なにかしら突っつく材料を探しているのだ、すれちがいざまに下らないことを呟いて、それで何事かを成しとげた気になりたいのだ、それで、そんなことでそいつは満足するのだ、それは戦いですらない、闘志を装うだけの臆病者の手口だ、薄暗い本屋に潜り込んで目を細めながら背表紙を読んでいる、そうしているとようやく身体がまともな温度になる、先週まで狂ったように降っていた雨は水分の扱い方を忘れて
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