思考は瓦礫の中で/ホロウ・シカエルボク
 
れてしまったようだ、渇いた世界の中に居るとアメリカの音楽が聞こえてくる、財布から一枚札を抜き取って雑誌を二冊買う、それをいつ読むのかは分からない、読まないかもしれない、でもそのときそれは絶対に必要なものなのだ、重くなった鞄を肩にかけ直して外に出る、連休の街は申し訳程度に賑わっている、この街がもう一度力を取り戻すことなんてない、それは外から来る連中に委ねられている、懐かしいが様変わりした通りを歩きながらふと、身体にぴったりなシャツを着た子供のころの自分自身が、怯えたように辺りを見回しながら向こうから歩いて来るみたいな気がして少しの間立ち止まった、潰れた洋服屋のシャッターの前で目線の定まらない男が立ち小便をしている、そいつを的確に評価するのはいつだって数人の女子高生の塊だ、ほどなく物凄い怒号がこだまする、若い男だ、立ち小便を終えた男に怒鳴り散らしている、それは正義漢ではない、外気温は35度を超えているのだ。


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