混血神話/ただのみきや
 
夕日が朝日へ生まれ変わるように
死は生と生のはざまの休息だった

あと少し もう少し
満ち足りて安らかに

しなやかで純粋な生の欲求
飼いならされて往くプロセスで

ただ月や星の光が深々と
言葉も文字もなく降り積もる夜があった

やがて明けに染まった雲海から
あふれ出した光を目蓋で仰ぎ見て

空(から)の器を差し出すかのよう 知らぬ間に
扉を開けていた その所在さえ気付かないまま

太古の記憶のようで
遥か先の幻視のよう

だれもが良く見知った事柄と
だれ一人見たこともない事柄が

捻じれながら一つの輪を結んだ
神話は優しく 嫉妬深い 母の乳
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