秘密のラッコ隊/ただのみきや
 
この糸のほつれをそっと咥えて
赤錆びた握り鋏はその蓮の手の中――
信仰と諦念の臺(うてな)に眠る 享年「  」


景色の皮膚を剥がした 
耳は遠く
階段を上り下る 
橙色の帽子
あなたの膝が笑うなら 
わたしの脾臓は歌います
鯨の蒼い喉歌
天使の純化された本能で


ギスギスした鉄の鎖がこの腹の中遠慮もなく
引き千切っては何もかもひっくるめて串刺しにして
引きずり回す蒸気機関の熱く冷たい一途さ
下腹部から眼裏まで閃光が逆走する
過去の唇の踊りがミスコンみたいに並んでいた


紙袋を被る
小さな眼孔
雑居ビルの背中を錆びた釘で
――曇り空だっ
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