真白な記憶、落下、ああ、二度だけ鳴る。/ホロウ・シカエルボク
 
れるだろう―そして、自分のつま先がいまどんなことになっているのかということについては考えないことにした、逃げなければ、そう思ったが、静かに俺を目指している甲虫の群れは、すでに俺の動きをがっちりと封じていた、密度の高い鎖で極限まで固められているような感触だった、ああ、と俺は思った、もう俺の力ではどうにもならない…そうして全身を激痛が襲い始めた、甲虫の顎はあまり大きくはなかった、いま俺の身体を切り刻んでいるだろう牙も、外から眺めた感じではあるのかどうかすらわからなかった、そいつらはいまや俺の顔面をも我が物顔で這いずり回り始めたので、俺はそういう形状をじっくりと眺めることが出来た、甲虫には目に当たるよう
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