羽虫の闇/ホロウ・シカエルボク
 
くらいのことだ…ええ、見えるかい、俺の羽虫たちが壁中を這い回る、俺は彼らに連れられて壁にぶら下がろうとしている、なぁ、待ってくれ、待ってくれよ、まだ全部描き終えちゃいないんだ、せっかく壁を全部空けたんだぜ、お前らがどんな手を使ったってまだ俺は手を止めないぞ…俺は壁を殴る、ペンを持っていない方の手で…そうするとやつらは一瞬ひるむのだ、そして俺はまた虫を描き始める、俺が描き上げようとしている虫と、俺の身体から天井までを這い回る連中が同じ存在なのかもう判らない、けれど俺は描き続ける、なんたって、時間は腐るほどあるからな―やがておぞましい天蓋のように部屋を埋め尽くした虫たちは、俺の体内で立てていたのと同じ
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