羽虫の闇/ホロウ・シカエルボク
 
具のすべてを倒し、ボールペンで壁に羽虫の絵を描いていく、隅から隅まで、埋め尽くすように、ゆっくりと、時間をかけて…長く、目的のない夜を塗り潰すように、立った一匹の虫を丁寧に時間をかけて、ゆっくりと描いていく、虫の頭が、虫の目が、虫の口が、虫の腹が、その側面に空いた呼吸器官が、虫の脚が、今夜の俺の酩酊を連れてどこかへ消え失せるようにと願いながら…壁は今夜のうちに埋め尽くされてしまうだろう、そうするまで俺は眠らないつもりだ、時間は腐るほどある―子供のころから俺は、時間というものにこだわり過ぎていた、過ぎて行く時間を追いかけ、神経過敏になって、真夜中に発狂していた、どこかに行ってしまう、すべてがどこかに
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