子よ、おまえに歌を教えてあげよう/ホロウ・シカエルボク
摘まむだけだったので
たまにどこかでくすねてくるもので充分足りていた
壊れたものはあまり食うことに執着しているようには見えなかった
壊れたものは雨が激しい夜には妙に浮かれて
汚れた身体から存分に雨を滴らせて満足げに笑っていた
そのさまはまるで動物のように見えた、すべての動物から外れた動物のように
壊れたものは不思議なほど丈夫で
たまに風邪をひく以外にはたいした病気もしなかった
壊れたものはもうずいぶん長く生きていた
初めにそこに居た二人よりも遥かに長く生きたころ
壊れたものはやたらに陽の光の下に居るようになった
椅子や寝台のほとんどがいまでは外に出されていた
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)