子よ、おまえに歌を教えてあげよう/ホロウ・シカエルボク
 

暗闇の中で何事か考えているようだったが
それはあまり具体的な物事ではなかった

やがて眠らないものは遥か昔
そこで三人で暮らした時のことを深く思い出すようになった
これまでの人生で思い出したことすらないようなことまで思い出した

眠らないものは眠らない時間を
そうした欠片の集合のなかで過ごすようになった
やがて眠らないものの時間軸はおかしくなり、眠らないものは壊れたものになった

壊れたものは明け方に決まって酷い叫び声を上げた
まるで住処が明るくなるのを恐れているみたいだった
光のある間はずっと俯いて過ごしていた

壊れたものは思い出したようにわずかなものを摘ま
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