子よ、おまえに歌を教えてあげよう/ホロウ・シカエルボク
 
で充分だった

二人が三人になり
また一人になってしばらくが過ぎた頃
出て行ったものがまたそこに帰って来た

出て行った時と同じたった一人だった
それまでそこに居た女はもう居なくなっていた
帰って来たものはたった一人でそこで暮らし始めた

帰って来たものはあまり働かなかった、いや
何度かは働いたけれど、上手くやることが出来なかった
帰って来たものはそのうちに何もしなくなった

火をともす油がなくなり、住処は夜になると外よりも暗くなった
帰って来たものの目だけが時折、ギラギラと輝いた
帰って来たものは眠らないものになった

眠らないものはただ起きているだけだった
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