夢夜、三 「孔雀いろの鍵」/田中修子
女は違って、女はいちどプツンとしてしまうともう好きになることはできない。
Jは分かっているような、諦めきれないような顔をして、昔のように鍵を開けて入ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい、J」
「どうも、はじめまして」
私と、いまの私の彼が後ろで家事をしながらどこかそらぞらしく対応して、最後の期待の力も抜けたようだった。
「これを、思い出に持ってきましたよ。あのうちの。いまのアパートに引っ越してから、荷物を探ったら出てきました」
Jのてのひらに乗っているのは、見たこともないようにきれいでやさしい、孔雀いろに輝いている二本の鍵だった。私はその手の派手な色合いが苦手
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